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pianississimo 4 〜〜〜 Très très faible 4 〜〜〜 「なぁ もう、いい加減に泣きやめよな。 目が溶けそうってか、融けるだろ? まだ、一公演ある間はこっちにいるんだし、 いくらでも会いに来ればいい。 それに俺も…… 会いに来る…し…… 」 先輩は私も泣くのに飽きて疲れてきた頃に言った。 のだめはどうやって、泣くのをやめて、いつものように出来るかもわからなかったのに、 やっぱり、先輩はスゴイです。 ケイケンホウフで、オンナのヒトの涙の止め方もスマートです。 いったい、どんなふうにこんなワザを身につけたんデスか……アへェ ![]() きゅるる・ル〜 うきゅ? せっかく先輩が、抱きしめてくれて、のだめに匂い嗅ぐのを黙認しただけじゃなくて、 体なんか、触ってもイイなんて言って…… 仔犬みたいにフグフグ、低い声で囁いたってのに のだめ、ズクンってして、心臓破裂寸前で先輩の言うようにすべすべお肌に手を伸ばしたら ピアノが・・・・・聴こえ……。 えっと........アレ? これって、レコードとか、ゴミ回収じゃないないデスよね。・・・・いえいえ、フランスには、ンなもんはありま・・・せんデス。 ・・・すごっくむーでぃな・・・って、そうじゃなくて。 コレは、いくらのだめでも、右から左に聴き流せませんっ そいえば、さっき確か、眼鏡かけて音叉持った、ピアノの健康診断のヒトが・・・・ ぎゃぼっ!! 調律師さんいたんダった・・・ 先輩がのだめをひっぺがして、口パクで、バスルームに行けって、鬼気迫る顔で指差してます。 的確な指示でデス。 さすが、指揮者です。迷うことなく、従わせるオーラがシュゴイ!! さすが、先輩です♪ ―― きっと、のだめと違って覗き趣味なんて無いですよね。 ―― 無いですよ、きっと。 そでないと、困りますから・・・・ それにしも良く考えてみると.... ひゃぁ〜〜 ピアノ部屋からは、ココ、通らないと玄関いけないじゃないですかぁ〜〜 のだめとシェンパイの、らぶ・あふぇあーが、いきなり・・・ あでゅー、いえ、おーるぼあーデス。。。 日ごろの心掛けが悪いのでしょうかねぇ。 もちろん、のだめじゃなくて、カズオの......... 俺様のくせに抜けてるってんですよ、先輩はっ 三善に古くから馴染みの調律師さんが、申し訳なさそうに、先輩に挨拶しながら帰っていった後、 熱を帯びて沸騰寸前だった二人は、ぷしゅーっと魂が抜けるように一気に急冷されて、そんなもんは幻だったかのように、会話していました。 「おい、のだめ 俺がデリで買って来たもの並べて、サイドディッシュ用意してる間、ピアノ弾け 」 「・・・・でもでも・・・・・ のだめ、ここんとこ、スランプで・・・・・ 」 「いいから、弾いてみ。 どんなのだって、俺はおまえのピアノ、一番だし ずっと、聴いてたいくらい、好きだから 」 ―― ああ、先輩・・・・・ ―― どうして、先輩はのだめのこと、こんなふうに…… ―― ずるい、ずるいです。ほんとにカズオ.......... 先輩の一言で、のだめ、気分がころっと、変わってしまいました。 さっきまで、弾くのが厭だったピアノを弾きたくて堪らなくなったんデス。 ベーべちゃん、何のためにピアノを弾くの? 落ち込み気味だったんです。どうしたらいいか、解んなくて迷ってた。 サロンコンサートが決まったから、ちょっと浮上したけど、それでも不安で……怖くて堪らなくて。 コンセルヴァトワールでも落ちこぼれ…… たった一つの取り柄のピアノさえ、ちゃんと弾けないのだめだから、先輩と一緒にいられないんじゃないかって。 いくら、サロンコンサートの依頼が来ても、先輩を追いかけていけるピアノの腕もないのじゃ、弾きたくないなって、心のどこかで思ってて。 でも、今この時だけは、オクレルせんせにだって、ちゃんと答えられます。 千秋先輩、 のだめ、今、シンイチくんだけのために ピアノを弾きマス・・・・ いつも、駄目駄目ののだめをまっすぐに立たせて、重いのに支えて。 時間がないのに、のだめが自分で歩きだすまで見放さないで見守ってくれる先輩。 厳しいけど、優しい・・・・・のだめの大好きな先輩のために。 そう、呪文料理は伊達じゃありません。 のだめが音楽とちゃんと向かい合える呪文をかけるために、素敵に美味しい料理を作ってくれるシンイチくん。 料理をしてくれるシンイチくんは、マルレの指揮者の千秋先輩じゃありません。 この時だけ、アナタは、のだめの恋人で。 甘える権利は、のだめのもんなんデス。 ウふっ プフふぷ…… だからネ。 シンイチくん。 アナタの眉間の皺がしばらく寄らないように、のだめの心を籠めた演奏を、シンイチくんへ・・・・ 俺はゴブレットの底の方にグレナデンシロップを入れ、そこにクラッシュアイスを入れるとルビーグレープフルーツのジュースを注ぎ入れた。 ライムがあったので、アクセントにグラスの縁に兎耳ではないけれど、ちょっと、皮ナイフを入れて飾ってみた。 「我ながら、上出来♪ 今日ぐらい、泣き虫のだめを少しだけ甘やかしてやろう 」 腰に手をやって、コンベックで、軽く炙って温めているシャポンを覗く。 するとのだめのピアノの調べが流れてきた。 「??!っ 」 ―― の・だ・め……の…奴 ―― 音が変わったどころじゃない。 ―― なんなんだろう、これ? 澄んだ音が、PPPでそっと心に触れて優しく揺らし、かさついてささくれ立った心を凪いでいく。 いつものこいつなら、自分は此処にいると言わんばかりにffで存在と個性を主張するのに・・・これは・・・・ シェイクスピアの悲恋物語『ロメオとジュリエット』をバレエで上演するためにプロコフィエフが作曲した Roméo et Juliette (Prokofiev Op.64) 母親の影響でピアノの名手だったプロコフィエフは、自身でこのバレエ組曲から、ピアノ曲として「十曲の小品集 Ten Pieces for Piano, Op. 75」 を編みモスクワで初演している。 だが、明らかにのだめの奏でるそれは、ピアノのナンバーとは異なるオリジナルのものだ。 導入部は『ロメオとジュリエット』Orchestral suites extracted from Romeo and Juliet Op.64 50曲めの 『ジュリエットのベッドのそば』(Act III−Scene3No 50 At Juliet's bedside)のシーンである。 一途に描くまだ見ない未来への夢、消え入りそうな儚さに彼女の若さが重なる、そして、本来はその前曲であるはずの『百合の花を手にした娘たちの踊り』(Act III−Scene3No 49 Dance of the Girls with Lilies)にメロディが自然に移っていく。 こちらはピアノ小品集の10番目に入っているピアノの旋律が甘く彼女の存在そのもののように俺の心に忍び入り染み渡っていく。 聴こえるか聴こえないかの耳を擽る優しい音が、俺のすべてを瞬く間にのだめの世界にいざなって。 切なく繊細な音色は驚くことにそのあと、のだめの心のままに驚きの展開を見せた。 それは日本でも知らぬものがいないのミュージカル映画『オズの魔法使い』の劇中歌として知られる“Over the Rainbow”(虹の彼方に)に気付かない間に変わっていたのである。 のだめの尖ったさくらんぼ色の唇がセピア色に褪せたフィルムの中のドロシーを演じる美少女ジュディ・ガーランドのように優しく動いた。 そよ風にのって届いた恋人の囁きや、母の温もりを連想させるその音色に俺は柄にも無く、うっとりと夢見心地にさせられた。 少し愁いを帯びた調べは俺への気遣いを漣のように伝えながら、癒しを施して、満たされた後には、無数の星の瞬きを湛える天の河が広がる。 そして、のだめのピアノが奏でる微かな響きが心に吹き渡ると、俺は軽やかに昇っていくのだ。 Somewhere over the rainbow Way up high There's a land that I heard of Once in a lullaby 空高く、虹を越えたどこかに ママが唄ってくれた子守歌に出てくる夢の国がある Somewhere over the rainbow Skies are blue And the dreams that you dare to dream Really do come true 虹の向こうにある国の空は青くて 信じた夢はすべて現実のものとなる ―― 反則だろ? ―― こんなの聴いて俺、これから どうしたらいいんだよ...... 無垢なのだめの俺に対する思いがまっすぐに伝わってきた。 その音を奏でるのは、子どもらしく、無邪気な心で一途に音楽への楽しさを表現するのだめではなく、 見まごうことのないくらい魅惑的に、女性としての煌めきを放つ・・・・しかも恋を知り初めたばかりの匂い立つ乙女 ―― 血の通った男なら・・・・ こいつのすべてが欲しい。自分の刻印を押して自分のモノにしたい。 そうしないと、普段飛びっぱなしで凄い事になってる翼を、思いつきに繕って、 どこだか、想像もつかない世界の果てまで飛んで行ってしまいそうな のだめ おまけに、抜けてるから帰り方も忘れたり、解らなくなったり…… 今は俺のとこに帰りたいって思って、泣いてくれるけど、そのうち、俺のこと忘れて 自分の奏でる音楽だけに夢中になって囚われてしまいそうで…… もう少しだけ時間が欲しい。 ニナは焦るな、というけれど、指揮者は楽器のソリストと違い、一人前になるまで時間がかかるのだ。 自分のオーケストラに魔法の杖を揮えるようになるまで……自分が欲しい音に近しいものをいつだって引き出せるように。 ああ、それはもしかすると叶わない夢なのかもしれないと自信がぐらつき始める。 せめて、魔法の杖の端を掴んでみたい。 そう、結局……中途半端なのが赦せないのは俺自身なのだから。 自分の音楽を突き詰めるだけ突き詰めて、駄目でも良くても、とにかく俺自身が何とか納得できるところまで来たら、そうしたら・・・・ 正面から、おまえに向き合って告げようと思う。 自分は、「恵」を一生離せない。 ……いや、放したくない……、だ・か・ら・死ぬまで傍にいて欲しいって。 言えるだろうか。 たぶん、その時が来たら、言えるんじゃないか…… いや、察するようにこいつが大人になればいいんだ。。。。 ちゃんと、大人の女性に進化しろよ、のだめ 俺様がいつだって、見ててやるから。 いつか、ふたりでずっといられるようになるまで。 おまえが今日、流した涙のこと忘れないから。 頑張らなくっちゃナ、俺…… ******************************* はい、いきなりです。妄想爆発SPでした。 認めたくないでしょうけど、このお方、のだめタンのピアノが聴けなくなったら、 それは即、俺さま的死活問題に繋がるってこと、とっくに解ってるわけなんです。 ******************************* |
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