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〜〜 D'un ami autour d'eux à Leur ami 1 〜〜〜 携帯が鳴った。メールの着信。。。 一斉同報だわ。見なくちゃいけないかしら? 今夜のお誘いなら誰からでも、遠慮したい。そう……たとえ千秋からでもフランクやユンロンからでも。。。だって今日はちょっとアナリゼでアルマン先生と意見が食い違った。 ふふ、のだめやターニャが誘ってきてくれるかも?、なんて思ってないところが、私自身、割り切って生きていけるようになった証拠かもしれない。 コンヴァトの女の子は私がピアノの練習をどんな時でも何より優先させることに愛想を尽かし、もう私を誘って来ない。 携帯電話とかパソコンとか、私自身、あまり、機械類には強くない。ピアノだって電子ピアノとかは人工的な感じがして、本物じゃないって思う。 それはちゃんと職人が作るクラッシックが出来た頃の楽器と、音の出し方も触れる感触も違って人の感情を跳ね返す気がする。だから、ネットなんかも嫌い。 だってインターネットみたいな架空の世界で不毛のコミュニケーションに勤しんでも得ることは少ないと思うからだ。 それにネットサーフィンみたいなものにうつつを抜かしている暇があったら、私はピアノを弾いて技術を極め、誰も到達できなかった栄光を得る。 皆がうっとりと私を見上げ、ママが気が狂ったみたいに手放しで拍手してくれる演奏を世間にしらしめることこそ、やり甲斐ってもんなのだ。 そう、私の才能は少しも枯渇してないって、ちゃんと証明できるはず。 ただ、言われるままにRuiは天才少女だってチヤホヤされて、ピアノを弾くと皆が関心してくれたり、ものすごく喜んで歓迎してくれて、私は皆の中心でとっても居心地が良かった子供だった頃…… 遠い遠い昔のことのような気がする。 いろんなことがあって、私は身体だけじゃなくて、心も大きくなって、ちゃんと成長したと思う。 一度、弾くのをやめたいと思って、Ruiっていうブランドを通してじゃない私自身の生き方を楽しんで若い女性としての生活を楽しもうと思った。一度しかない私の時間を…… そう、パリで私はいろんな人たちにあった。そうして、やっぱり私の生活はピアノ無しでは成り立たないし、私はピアノから離れられないんだって自覚した。 でも、離れたくないのは自分なのだ。 ピアノしかない……それがどんなに幸せなことだったのか、解ったのがパリに来て一人暮らしをした意味だったのだと思う。 ここに来て、私が……私自身の選択で、自分がピアニスト孫鋭であることを選んだのだ。 そうとなれば、私に迷うことなどない。 ううん、正直になろう。 でもひとつだけ、自分の気持ちが惨めったらしくなるので、誤魔化してる事がある。たぶん、私は怖いのかもしれない。 ネットの世界も私が嫌いなマスコミに通じるから好きじゃ無くなったこと。 相変わらず、アタシって何って考え始めると迷路に嵌る…… 考える暇なんて無くなればいい。 だから、私……ピアノ弾いてればいいんだ。 そうよ、自分が何だか、知ってる人なんて、この世にいないんだもの。 いや、いないって言っちゃうのも僭越だから、知らない人が大部分だと思うってことで、そんなこと考える方が変なんだって、思った。 ++++++++++++ あ、また着信だ。 あまり、私宛のメールは来ないのニ、なんで続けて2通......... 何だろう? 今来たメールは、ママからだった。 もう一つは、ピアノ科のとても明るい世話役みたいな子。 今年の学年発表会でも、クラスで一番人気のある子が選出されるラストの現代音楽のメドレーに彼女が出るのは確実だし。 今の私にはすごく羨ましくて、眩しい存在だけど、いったい彼女は何の用事なんだろう? とにかく、ママからのメールを・・・まさか、パパが事故とか? それともお婆ちゃんに何かあった?ってことはないと思いながらも焦って開けた。 うちは女系家族で、パパは殆ど出稼ぎ状態でニューヨークにいるし、お爺ちゃんは死んじゃって、家長であるお爺ちゃんの腹違いの兄が孫家当主だ。 あ、この場合、お婆ちゃんも亡きお爺ちゃんもうちのママのだから、中国系アメリカ人のパパは早くから両親に死に別れている。 パパはニ世だけど米国籍と中国との二重国籍を持ってたけど、私が小さい頃良く中国に戻って来て、諜報活動してるってちょっと怖い目に会いそうになって多分、今は米国籍しか持っていないから、もしかすると手続き上はママと離婚してるのかもしれないけど、昔も今もママとか私との関係は変わってないはずだ。 なんと思いがけないことに、珍しくママがメールにURLを貼ってること。 いつも電話かけろ、とかなのに・・・・ それも、「早地対待!」(早く見てごらん)って何かしら…… うわー、何これ? シュトレーゼマンがUMAと夢の共演って。。。これってノダメさん? ++++++++++++ 何とクラスの女の子のメールもそのURL.。。。 ショックだった。はっきり言えば、寝耳に水を垂らされたみたいな感じ。 機械は嫌いなんて言ってる余裕も無く、すぐネット上で配信されていた動画を見た。 何なんだろうこのヒト・・・・ ノダメさんってこんなふうに弾く人だったんだ。 舞台から、発せられたピアノの色で、世界が彼女の色に染まる感じがする 私はただ、彼女が羨ましくて…… 千秋っていうすごく素敵なパートナーがいるノダメさん。 いつも自分の音楽に耳を傾け、導いてくれる力強い手があって。 指揮者は自分自身が音楽家だから、ライバルとも言えるのだけれど、お互いに認め合って、高め合って、 どちらかが駄目でも、支え合って一途に自分たちの世界に邁進出来る、なんて恵まれてるんだろうって思った。 それに、偶然聞いてしまった彼女のピアノの音…… 彼の部屋から聴こえた、澄んだ彼女の音は彼への好きっていう気持ちで弾んでた 恋する透明な優しい音色と、生きることは愛に溢れる世界でピアノを奏でることって迷いのない幸せを響かせて。 だから・・・・かもしれない。ううん、間違いなく、そのせいなんだと思う。 だって、私は今までの自分に出来なかったことをしに、世界のRuiを放棄して、パリまで来たのだから。 千秋は言ってくれたじゃない。 代振りした時に私と競演できて、すごく嬉しくてわくわくしたって。 復帰というか、演奏活動するってママに言って彼を指揮者に指定した。 ちゃんと、私にだって恋が出来るし、ノダメさんより私の方が…… 思ったのだ、確かにそういうふうに…… 自分の感情をありのままに、飾らないで表現する。 今までどんなふうに音楽に向かいあってきたかを、素直に千秋に語り、自分のピアノを聞いて貰って。 それで彼が私に魅かれたのなら、それは運命で…… 音楽を一番に思う気持ちが同じなら、一つの演奏を通せば、お互いの距離は誰よりも近づくはずだから。 実際に彼と目交ぜして、背中を押されてオーケストラと協奏したピアノは、今まで私が鳴らした中で、一番自分の心に響き、 観客の吐息までが熱く、私の中に生まれた小さな音楽の心が海を旅し、まるで鮭が故郷の川を赤い腹を見せながら、銀色に煌めいて産卵するために戻ってきた気持ちになった。 ただ、その熱に千秋も、たしかに、満足したのだろうけれど、それは演奏家として、今、最高の演奏を引き出せた満足。 それ以上でも以下でも無かっただけで。。。 おそらく、彼はコンチェルトする奏者が持つポテンシャルをその時の最高に、あるいは過去の柵を飛び越えて高みに昇るのを見るのが好きなのだ。 ノダメさんは、千秋とずっと一緒にいて、年も見かけ以上に上だから、みっともないくらいに足掻いて這い昇ろうとしてた。 あのエネルギーは確かにUMA並みで、千秋は気にしないでって言ってたけど、千秋ってやっぱり、音楽的に彼女が一番欲しかったんじゃないかってコレを見て思った。 テレビでもシュトレーゼマンとのロンドン公演は放映された。いったい……、私はパリはおろか、アメリカでも放映された事はない。 クラシック音楽なんてそんなものだし、CDがリリースされて幾らの世界で、中国人が世界中からオファーがあると祖国の権力で、『世界のRui 』 なんて言われるけど、 技術的には追随を許さないって思うけど、今まで、あの千秋との演奏を除いて、巨匠やオーケストラが望む演奏を 『Rui』というブランドに臨む正確無比なテクニックを存分に発揮してきただけなのだと思い至る。 正確なアナリーゼ、先生たちも褒める徹底的な楽想の理解…… でも音楽は音の羅列で、空白や休符やテンポ、強弱、タッチそういうものを自在に操ってこその…… 負けた…… 心からそう思った。 彼女は自分の世界を持っている。 そして、それを表現したのだ。 私が千秋とやったように…… 私が千秋とやりたかったのは、自分に合わせて、自分の表現したいことを理解して、 恐らく、独りでやるより一緒なら素晴らしいモノを奏じられることを予測したからだ。 今まで、両手でも余るほどの巨匠たちと共演してきた私は、そんなことを自らやろうと思ったことは無い。 ただ、その場にRuiが弾くであろう音を期待され、その期待通りに弾いて来て、それがRuiだと信じてきたのだから。 悔しくは無かった。 彼女は音楽を奏でた。 共演したのが、シュトレーゼマンや一流のオーケストラだと言う事は彼女にとってはどうでもいいことで。 きっと表現者としての彼女のエネルギーは、どこかで噴出したがっていたのだろうと思う。 きらきらと何処までも輝きに満ちた、万人を魅了する、少々個性的過ぎる彼女の音は 決して決して、誰にも真似出来るものではない。 それに、彼女はたぶん…… 自分より、ピアノのテクニックも上だと思った。 何故、自分は今まで、彼女みたいに音楽を出来なかったのだろう? でも、彼女に出会えて良かったのだ。 そのことに気付かせてくれた彼女が涙でかすんで見えなくなった。 大丈夫、自分は自分にしか奏でられない音楽を弾いていけばいい。 私が音楽を続けていく限り、私はいつだって、上を目指せるのだから。 ありがとう・・・・ノダメさん。 ********** ********* ********** そしてこの時、私は、まさか彼女が、この演奏のせいで上をめざすのをやめようかと考え ウロウロと周囲の人たちを心配させながら、迷子になっていたことを全く知らなかったのである。
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